「甘いものは苦手って言ってませんでしたっけ?」
「ま、たまにはね」

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貰い物ですがどうぞ、と要らないひとことを付け加えたこの男は相変わらず鈍チンだと俺は思う。

差し出された箱には猫の舌を模したチョコが整列している。
箱の蓋にも猫、猫、猫。
愛らしいのかもしれないが、俺たちみたいなオッサンには少々少女趣味過ぎやしないか。
おそるおそるひと口かじると、そいつは途端にとろけだした。
濃厚な甘苦さに舌がもつれる。
こびりついて取れなくなりそうな甘い匂いが鼻に抜ける。
奇しくも昨日、2月14日。
ちんけな小箱にこめられた送り主の情念にはいっそ眩暈がする思いだ。
どうにか食べ終えたが舌は痺れて背筋ゾクゾク、俺は思わず身震いをした。

「っ、あー……」
「なんです」
「甘い」
「そりゃあ……チョコレートですから」
「甘すぎるよ。アタマ悪くなりそう」

味わいなれない感情のまま、罪のない菓子にお門違いのやっかみをなすりつける。

だってそれは媚薬だと聞いた。

しつけの悪い俺の飼い猫。
あとで媚薬ごと、おまえを喰ってやる。


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(解説)
猫とリヴァイアサン。チョコレートに罪はないよ。
2009年のバレンタインデーにシンクロ記念!『タバコヤビルヂング』のリョウヘイさんにモテモテな隊長を頂戴しました! リョウヘイさんの、まるで話の一場面を切り取ったかのような画が好きです。さらにひとことふたこと素敵な台詞付きで載っけてあったんでそれをそのまま使わしてもらって僭越ながらsss。時節の空気を読んでカカ→テンの甘甘仕上げ(当社比) あ、ウンこれで目一杯ですごめーんね笑
というわけでどこまでも踊っちゃうよ!リョウヘイさんいつもありがとー ラヴ!!




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