家主然として部屋にいるカカシはたいそう不機嫌な様子であった。

「こんな遅い時間までオマエってコは…」
「…ただいまもどりました」
「だいたいいつもオマエってやつぁ人の話を聞かなさすぎる」
「いつの世から身に覚えのない説教が労いの言葉になったんですか」

一週間の任務を終えて、我が家にたどり着いた途端にこれだ。

「不法侵入のくせに、ずいぶん大胆にご機嫌斜めですね」
「罪深きテンゾウ、悔い改めよ」
「このシチュエーションで罪人は間違いなくアナタですよ」
「何の書き置きもなく一週間も逃亡したお世話係がどのツラ下げて!」
「任務だって言いましたー」
「そんなの聞いてませんー」

約3メートルの間をおいてにらみ合いが続く。

「とりあえず風呂入らせてください」
「勝手な行動は許さん」
「自宅で行動を制限されるいわれはありません」
「動くな!今すぐ銃を捨てろ!ひざまづいて両手を頭の上で組んで壁の方を向け!」
「センパイ、ボクがいない間に『24』のDVD観ましたね」

なんの遊びも、気が済まなければ終わらないのが性質だ。
言われたとおりの体勢で壁に向かうと、ヘッドギアをすぽんと外された。

「役立たずめ、こうしてやる」

カカシさんの指がぎゅうとボクの耳をつまむ。

「痛いだろ」
「痛くありません」
「痛がれ」
「いたたたた」
「恥ずかしいのか、このメス豚め」
「どこの何様ですか」
「耳なんか赤くしちゃって」
「痛いんですよ」
「ははーん、効いてないんだな」
「聞いてないのはそっちでしょう」
「じゃあ答えてやろうか」
「唐突だな」
「外はものすごく寒かったんだろ」
「ええ確かに」
「冷えた耳はつままれても痛くない」
「わかってるならもうやめてください」

カカシさんは黙ったまま、ボクを立ち上がらせた。

「3分で風呂からあがってこなかったら拷問する」


結局、そう言い放った本人が1分も待たずに風呂場に乱入してきた。

「まったくどいつもこいつも人の話を聞かなさすぎるのよ」

全裸のカカシさんの、耳が赤い。













2008/10/17

(素直に言わない i missed you)













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