溶液の中は照らされていました。
たぶん眩むほどに。
ええ、見えていなかったのです。
ぼくはずっと目を閉じていた。
薄目を開けて見る部屋は歪み、いつも暗くて。
怖くて、怖くて。



部屋の中は明るかったよ。
月明かりの夜だった。
畳に落ちる障子の影が鮮やかでね。
人の最期を照らす光とは思えないほどだった。
俺は全く、近寄ることもできなくてさ。
怖くて、怖くて。



狂おしく叫ぶこともかなわぬ。
忘れることすら、もはや。


いまだひとりはひとり。
呪い、傷つき、いつまでたってもただひとり、怯え。


「夜は終わる」

そんなよりどころのない慰めよりは
今宵、どうかひとこと、なまえを呼んで。

諦めるでもなく、受け入れるでもなく
その傍らに添い、今はただ、別々であることに心安ら。


何も知らない夜鳥が泣く。
おまえもはやく、ねぐらへおかえり。









2010/04/06



(ときに暁 ときに闇 吾が君がときにともしび)













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