※現代パラレル。サラリーマン。
かくして俺は後輩の、
同僚の、
男の、
ヤマトの、
『脱いだらすごかった』腹の六つ割れを汚した。
急には止まれない性は互いが一緒、
眉を寄せ、痛ましく顔を歪めたヤマトが引っ掴んだ俺の尻を揺すり続けるあいだ、
俺は痛みだか快感だかなんだかよくわからないものにひたすら耐えていた。
今がその時だなんて、のぼせ上がった頭で経験則(それも結局はバカな勘違いだ)、
一度だけその言葉を口に出し、囁いたりして。
どうせ聞こえちゃなかった。
否、喜ぶべきなのか?
結論として、俺は臆病者だ。
ことの流れ。
慣れているような物言いをして、俺から誘った。
我ながらひどいやり方だったと思う。
儘よと。
あれをこうすりゃこうなるものと。
知りつつこうして、こうなった。
まさにそれだ。
「ん……、っく、……う!うっ、」
声を殺し、衝動にヤマトがうめく。
と同時に汗が噴き出し、肌が濡れるのがわかった。
ヤマトが動きを緩めるのを待たず、ごつごつとした心地の肩にそっと身体を預ける。
その肌が冷めて、醒める前に。
湿りを孕んだ白ブロードのシャツの下、厚く覆われた胸郭に遠慮がちに触れて。
今だけ、その下に狂わんばかりの拍動。
うれしかった。
パーテーションに大きな幽霊を揺らめかせ、静かな羽音を立て続ける液晶のモニタ。
映し出されたままのグラフは見事なまでの右肩下がりだ。
ここから先は下り坂が待っている。
「……あの、まぁ、……なんだ、」
苦しい胸のうちを囁き、告げたこと。
気まずい沈黙も。
どれもこれもこの間違ったやり方の後始末にはなりはしない。
ただこのまま顔も上げられずにいて、すまなかったな、と続ける前に、
あいつはあいつの首にかけた戯れの紐を外し、俺を押しのけるんだろう。
わかってる。
ヤマトがネクタイを引き抜いた衣擦れの音は、始まりの合図じゃあないんだ。
ああ、どうして俺は。
2009/03/17
(どうして俺は、男なんか好きになっちまったんだろう)
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