あーはいはい。愛してる。愛してるよ。
だから俺、嘘なんかついてないって云ってるでしょ。




それでもまだごそごそと、未練たらしく擦り寄ってくる奴をとうとう全力で押しのける。

「んもー、オマエしつこいねぇ・・・これ以上やったら、俺、帰るよ」
「だってまだ今日一回しかしてないじゃないですか」

普段なら至極全うな逆ギレも、今日は一層気に障る。
眠りを邪魔されて機嫌が悪くなるのは、なにもどこかのお坊ちゃまに限ったことじゃあないってことだ。

「だからせめて抱き枕のまま、今日はここで寝てやるって云ってんでしょうが」
「犯されてもなんの反応もない抱き枕なんて、僕、要りません」

あ、犯すつもりなんだ。
あはは。笑えなーい。

「えーーーヤマト隊長ってサイテー」

意外と上手いって評判の、ピンクのあの子の口真似。
でも、今にも襲いかからんとこちらを見据えているテンゾウの口元は、それを聞いてひくりと歪んだ。

「・・・チッ・・・・・・んっとに・・・・・・前は、もうちょっと若かったと思うんだけどなぁおかしいなぁ!」

テンゾウがどさりと乱暴に横になって、ベッドは俺たちの下でギシギシと壊れそうな音を立てた。

オマエ、なんだ、その棒読み。
あげく後輩の分際で俺に向かって舌打ちなんて、ずいぶんいい度胸じゃないの。
それに俺だって今のは擬音で表すなら『カッチーン』だバカ。


「あーあ。・・・愛ってなんなんですかね!カカシ先輩」
「愛ってのは一回ヤれば気が済むってことだろ」
「それは老いですよね」
「愛も老いも似てるからいいんじゃないの」
「今の先輩には老いしかないみたいですね」
「オマエは愛情感知センサーがついてないみたいだね」
「発信されてないものを受け取ることは出来ません」
「機能してないねぇ。こんなに愛されてるじゃないのよ」
「愛されてる気がしません」
「愛してますよォ?」
「ハ・・・嘘ばっかり」
「嘘じゃないですよォ?」
「それも嘘だ」
「あーはいはい。愛してる愛してる。嘘なんかついてないでしょ」
「また嘘」

イチャパラに出てくるような不毛な会話を愉しんで、結局その晩俺たちは、狭いベッドに背中合わせに眠った。






嘘じゃない。
俺ってこう見えて、嘘つくのって嫌いなのよ。

それでも今晩、眠いってのも残念ながら嘘じゃないんだなぁこれが!

・・・ま、真実を追究するあまりの拒絶ってことにしといて欲しいね。
愛に偽りなーし。


だって結局俺より早く寝息を立て始めてるあたり、かわいいじゃないのって思ってる俺に愛がないわけないじゃない。
温かな背中に意識を預けて目を閉じれば、まどろみの淵はすぐそこ。



おやすみテンゾウ。






明日覚えてろ。












2008/04/10


(痴話喧嘩)



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