ともに青春を過ごした仲間よ。
さあ今、手に手をとって新たなる愛の世界へ・・・!









might (be a) gay guy









気配を消すなど忍として基本中の基本。何の問題もない。
それにしても、今日の俺はなかなかにナウいことを思いついたものだ。
名づけて『ダイナミックサプライズエントリー』。
退屈な入院生活にはもってこいの見舞いだ。
ナウいにもほどがあるじゃないか。
さすが、俺だ。

「はたけカカシ殿」と書いてある。
目当ての病室は、ここだ。
フム。どうやら先客がいるようだな。
男のようだが。誰だろうか。・・・まあ、誰でもよかろう。
今日は特別に客人もろとも、まとめてハッピーサプライズをお見舞いするとしよう。
ハッハハハハラッキーなやつもいたもんだな!

おおっと。
今はナイスガイポーズで高笑いをしている場合ではない。
姿勢を低く保ち、手をかけてそろりそろりと引き戸を引く。
そして、同じ間違いを犯すことのないよう、あの日以来必ず持ち歩いている小さな鏡を差し入れ、中の様子を窺うのだ。









思えば、この2、3日、俺は半日と空けずにここに通って来ている。
そして見舞われている当の本人は「もう来なくていいよガイ」と、俺の多忙を労わりつつも遠慮深く、照れ隠しのような発言を繰り返している。
だがカカシよ。俺は知っているぞ。
それは今流行りの『ツンデレ』ってやつではないのか?
くぅぅ、まったくお前ってヤツは、そういうとこがまたナウくて、ム カ つ く・・・!



そう。
あの密着しながら過ごした日々。
俺は、本当のお前というものを知ってしまったのだ。




風影奪還の任務後、俺は砂隠れからお前を背に負ぶって帰ってきた。
あれは、消耗した仲間を思いやり、労わる心からとった行動だ。
いや、むしろ、いつもどおり体力ないなコイツと思いながら肩を貸していた。
そして、このままだとネジやテンテンに「遅い」とかなんとか云われ続けると思ったら居た堪れなくなり、つい放り投げて背負ってしまったというのが、正直なところだ。
だからあくまで、最初から平素と違う意識を持っていたとは云うまい。

それは、我が永遠のライヴァル・はたけカカシの手足であり、股間であり、声であり、尻。
しかし、しな垂れかかる肢体、密着する股間、耳元で力なく囁く声、触れる尻・・・

一陣の熱風がどこまでも続く黄沙の地を駈け、俺を煽ったというのか?
任務後の昂りなどと言い訳するつもりも毛頭無い!
今までも、チャクラを使い果たしたお前を負うことなど何度もあったというのに、今回のお前はあまりに、あまりに「デレ」だったのだ・・!









ところで、君は聴いたことがあるか。
この青春の歌を。

『走る走る俺たち 流れる汗もそのままに』

そうだ。
まさに青春。
俺は走った。全力で走った。
邪な思いを振り切るように。ひたすらに!
今思えば間違いない。あれは昇華であったのだ。
純粋な、しかし浅ましく、眼を背けたくなるような欲が俺の中に、この俺の中に湧いたのだ!

白状しなければなるまい。
背に負い、お前の口布越しの熱い息が耳にかかって、つい・・・俺は、お前の・・・お前の尻をこの手に揉んだのだ・・・!

しかしそこには、間違いなく何かがあった。

あれは、間違いなく、愛だ・・・。





そして・・・、君は知っているか。
青春の歌の、その続きを。

『いつか辿り着いたら 君に打ち明けられるだろう』

そうだ!
これぞ青春の力!
俺は、走りぬいた。
誰よりも早く里の大門をくぐり、白線を、目には見えぬ勝利のテープを切ったのはこのマイト・ガイだ。
一着は、あくまでも俺。
そして栄えある二着を、カカシ、お前にささげることが出来た。
お前はとんだラッキーマンだったな・・・。
そしてそれは、紛うことなき俺自身の喜び。
いうなれば『愛のワンツーフィニッシュ』だ!

門番の中忍たちの羨望、弟子たちに捧げられた憧憬。
そんなものに満ち満ちた痛いほどの眼差しは何にも変えがたい。
我々の新たなる門出への餞だとは思わないか!なぁカカシよ!!





さあ。
俺は今、ここに打ち明けよう。
人はふたりを永遠のライヴァルと呼んだ。
切磋琢磨し、鎬を削る存在としてお互いあり続けた。
しかぁし!
これから先、俺とオマエはライヴァルであると同時に、互いに手に手をとって時には熱く抱擁を交わし、労わり合い、あわよくば、こすり合い扱き合って、出したり入れたり!!
カカスィ!お前とならそんなことも俺は、俺は吝かではないぞぉぅ!!









そういうわけで、俺はいそいそと通いつめている。
しかし、とりあえず、鏡に映るそいつは誰だ?
見慣れない顔だが・・・



それにしても、お前ら、なんてことしてるんだ!
ここは神聖なる木の葉病院。
いくらベッドの上とはいえ、イチャイチャしてチュッチュチュッチュして、そんなにくちゅくちゅしてるのは、オマエ、それ、いいのか!

なんということだ!カカシ!お前、ホモだったのか!!

・・・いや、ここで誤解が生じるような発言を訂正せねばならんだろう。
俺は決してホモの皆さんを侮っているわけではない。
男女は言わずもがな、同性同士の愛もまた然り、完全なる愛の形・・・
それでなければ、お前を負った時の俺の昂りは愛以外の何だというのだ。

そうか。わかったぞ・・・。
あの熱い吐息は、俺を・・・。
カカシよ、オマエってやつはどこまで、どこまでツンデレなんだ!




さて、俺はエビスと違って性愛というものを表向き一切認めないという性質ではない。
そして、むしろ、その状況は・・・なんというか・・・・・









「・・・ん・・・・・・ハッ・・・・っ」
「も・・、こんな・・・・」
「・・・ね、ここで・・・・しよ・・」
「誰か・・・来・・・」
「・・・ン・・ねぇ・・・いいから・・・・・・も、ちょっとだけ・・キス・・」
「・・・止まんなく、なりま・・す・・・・・」
「なってよ・・・もっと・・・・」
「カカ・・・センパ・・ィ・・・・、ぃい・・?」
「・・ン・・ん・・・・、ぁ・・んっ・・・テ・・・ェンゾォ・・」









「何をしてるんですか、ガイ先生」
「んごぉぉわっっ??!!」

慌てて振り返ると、そこには俺の可愛い弟子が立っていた。

「リリ、リィィィィーー!!びびびっくりするじゃないかっっおおまおまおまえこそこんなところで一体何を・・」
「僕はサクラさんに頼まれまして。サクラさんがシズネさんに頼まれたコレはシズネさんが綱手様の言いつけでサクラさんに持っていかせろとおっしゃってたものだそうでサクラさんはいろいろ忙しくてシズネさんにもサクラさんを見たらりーくん是非手伝ってあげてと云われてましたので僕が、届けにきたんです。お薬。カカシ先生の部屋はここですよね?失礼しま・・・」
「ノォォォォォォォォーーー! リーよっっ、今はいかーーん!」

俺は大慌てでリーの脚に縋りついた。

「なぜでしょう?」
「そそそそそれはだな、今は、あれだ、とにかく、あ、あれだ、愛だ!愛だからいかんのだ!愛!!」



愛、その言葉は魔法だ。
少なくとも今の俺には万事をそれで総括しうるほどの力を持った言葉に思えた。
いささか強引ではあるが、リーにはこれで納得してもらうしかあるまい。
なぜなら今その中は、めくるめく愛のパラダイス・・・!

「・・愛・・・ですか?」
「そう、愛だ!」

俺は爽快なポーズとともに立ち上がり、納得いかないといった表情のリーの肩を力強く抱き寄せた。

「ぐえ」

リーの口から、厭な呻きが漏れた。
がらりと戸が開く。

「・・・」
「ガイ・・・お前、なにやってんの」
「ガイ先生・・・ぼ、僕は・・・先生となら・・・!」





見知らぬ男の、猫のようなまなざし。
その奥からは、我が愛しのライヴァル、カカシの憐れむような・・・。
リーの・・・なんだその、獣のようなぎらついたまなざしはっっ!
お、お前ら、そんな目で俺を見るなっっ。







愛だ。
この煮え滾る愛にまかせて、ハッピーサプライズと称し、うさぎちゃんのかぶりもの(気の早い特上連中が忘年会の余興のために用意していたものを拝借)をかぶっていたのは、他でもない、俺だ。

そして、柔軟性、保湿性に優れるマイティスーツの中で激しくそそり立ったマイサンが、可愛い弟子の脇腹にめり込んでいた。







熱い涙が頬骨を伝う。
間違いなくこれは愛と、青春の、滂沱。









最後に、これは完全な余談だが、後日俺は新たなる門出を迎えることとなった。
カカシとではない。

リーと、だ。









(了)







2007/11/13

(気づいてたよ当たり前じゃない。ま、ガイなら別にいいかなーと思って、さ)




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