(a girl)











大事は終わり、家も、里も、人も。


そしてなんとも悲しいことには

恋しい好い人見えなくなって

月に向かって涙を流して、私の身体は大人になった

同じ月とてまた昇り、身体は懺悔の血を流す

あのとき私は強くなかった

どうして私は弱いのか



−−−−−−−



また暑い夏の夜が来る。

動きの鈍い身体を引きずり帰り、此処はもう寝台へ倒れ込むだけの暗い部屋。

髪を梳き、湯浴みして、うすく柔らかな腰の周りに花の香りをまとうのも忘れて。

ただただ眠る。

夢に見るのは見ていないはずの後ろ姿と、泣いていた自分。

時々、悪戯に笑う青い目の。


何もかも、本気で求めようとすればその距離の遠さを思い知らされるばかりで

何故ふたりの男の子たちがあんなにも急いていたのか

今更ながらの解悟に、夢のまにまに涙して。


目が覚めたときに残るのは、嫌な感じの汗と涙の痕、ボサボサの髪。 私、ひどい顔!




太陽が昇ればまた清く身を整えて、笑顔を作って道を歩く。

足どりは軽く躍るようなステップで。

可愛いハミングもふわり、ふわり。

私はあのときより強くなっているのかしら。

頬に指を当てて小首を傾げる乙女な仕草も似合うはず。




そうなの。



大人になってきた。

やればできる。

もっともっと強くなる。



夜に泣いても、他の誰にも涙は見せない。

ハミングしたって心は閉じたまま。

ぽかり浮かぶ月に押しつぶされて血を流す私が、何よりの証拠。



強くなれる。

怖くなんかない。




今日、師匠に、伝えなきゃ。







(続)        














2007/07/10

(脆くも堅いもの。 少女のこころは時として深謀遠慮に欠け、その浅薄なさまこそが彼れを少女たらしめん)




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