(filled with)











旨かったな。

うんおいしかった。ごちそうさまでした。

いえいえ、どういたしまして。



そんな当たり障りのないやり取りのあと、満腹感の上に何とか支えられているのは、再びあの暗澹たる心持。

けど、さっきまであんなに絶望してたのはおなか減ってたからなの?

満腹だと 『ま、いっか』 って気になってるからどれだけ私って単純。 不思議よね。




でも。

思わず小さく溜息が出た。





「サクラぁ、ちょっと喰い過ぎたから腹ごなしに遠回りして帰るぞぉー」



沈下の無限ループを断ち切る声は、頭の上から降って来た。

カカシ先生はひらりひらりと電柱の上を飛んでいく。



うしろについて、私は屋根を蹴った。

夜の風に溶けるようにゆっくりと、まるで考える隙を与えないような緩緩とした速度。


ゆっくりゆっくり、いろんな話をしながら、わたしたちは夜の散歩を続けた。

安らかに静まった里の中を巡りながら、わたしたちは話を続けた。

それは紛れもない、今夜のための会話。





「ねえサクラ、今夜オレ、お前を抱くんだよ」

「3つきいたげる。サクラの望みは、なんなの?」





焦燥も、落胆も、恐怖も、今は感じない。

その声は穏やかで、聞き慣れた声だったから。





部屋に帰ったら、シャワーを。

それと、灯りを消して、暗くして。

わたしがわたしであり、今より強くなれるよう。




「ん、了解。」






気づけば昼間に手差した紅は、すっかりはがれて無くなって。

私の中を満たしたのは、旬の恵みと桜色のつや。

穏やかに成長をみつめてくれる人のいる、安堵。







(続)        














2007/07/21

(あまねく平穏に必要なもの それは満腹感)


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